中国・四川省綿陽市で出土した前漢(約2100年前)の漆塗りの馬や武人木像「木胎漆騎馬俑(よう)」の保存処理にこのほど、岡田文男・京都造形芸術大教授らが乗り出した。漆製品の現状調査や材質分析を試み、現地で行った中国側と共同の保存処理実験にも成功した。今後、約200点に及ぶ遺物の本格的な保存作業に入る予定で、岡田教授は「将来は保存処理技術の中国移転を目指したい」と話している。
「木胎漆騎馬俑」は1995年、綿陽市の諸侯墓「永興山2号墓」から100体以上が出土。秦始皇帝の兵馬俑と似ており、死者とともに埋葬される「俑」では黒漆を塗った初めての遺物だった。しかし、中国ではこれまで大型の漆器を保存処理した例がなく、大量の出土品は綿陽博物館の地下で、水を浸したスポンジで巻いただけの状態で保管されたままだった。
このため、出土品を管理する同省文物考古研究所は、漆器に詳しい岡田教授に保存処理法の協力を打診。岡田教授は、高級アルコールを使って出土品を保存処理する方法を共同開発した𠮷田生物研究所(京都市山科区)とともに支援することにした。
このため、出土品を管理する同省文物考古研究所は、漆器に詳しい岡田教授に保存処理法の協力を打診。岡田教授は、高級アルコールを使って出土品を保存処理する方法を共同開発した𠮷田生物研究所(京都市山科区)とともに支援することにした。
一昨年、考古研究所の研究員が京都を訪れ、吉田生物研究所で保存処理技術を約2週間、研修した。昨夏からは考古研究所で保存処理のための専用槽を設け、研修した研究員らが出土品の一部で保存処理実験をした。
実験中、岡田教授らが定期的に訪中し、アルコールの浸透や洗浄作業などを指導。先月末に一定の作業が終わり、ほぼ完全に保存処理できることが確かめられた。岡田教授は「少しずつ中国の技術者を増やしながら保存処理をしていきたい。処理後の出土品を日本で公開できれば」と期待している。