
京都大は30日、中国北方にあった帝国・遼(916~1125)の皇帝陵・慶陵から調査隊が1939年に持ち帰った極彩色の人物壁画(11世紀半ば)を、6月9日から初公開すると発表した。同大学によると、日本にある唯一の皇帝陵壁画で保存状態も良好。中国でも遼時代の壁画は劣化が進んで公開可能なものが少ないとされ、日中両国の研究者は高く評価している。
慶陵は北京から約500キロ北東に位置し、京大の調査当時は満州、現在は内モンゴル自治区にある。壁画は慶陵の3陵墓のうち、地下9~11メートルにある東陵(南北21.2メートル、東西15.5メートル)の入り口付近に描かれていた。ほぼ等身大の武人像で、緑色の服を着て威儀を正す笏(しゃく)を手にしている図柄。縦147センチ、横74センチ分を石膏(せっこう)に埋め込んで固定してある。

中国の慶陵から京都大の調査隊が持ち帰った
武人像の壁画
=京都市山科区の𠮷田生物研究所で
武人像の壁画
=京都市山科区の𠮷田生物研究所で

東陵は、文学部教授だった故小林行雄さん(考古学)らの調査隊が発掘調査した。7つの墓室や通路の全面に約70体の人物像や山水画などが描かれていた。非常にもろく、あちこちで剥落(はくらく)していたため一部をはぎ取って持ち帰ったらしい。その後、同大学の地下室や総合博物館に収蔵され、一般の目に触れることはなかった。今回は文学部創立100周年記念として、文化庁や中国側の確認も得て公開にこぎ着けた。
温度や湿度を厳密に管理していたわけではないが、適度に乾燥してカビなどは見られない。ただ、発掘時の土などが絵を覆っていたため、保存処理会社「𠮷田生物研究所」(京都市)と京都造形芸術大の岡田文男教授(文化財科学)がクリーニングを施し、鮮やかな色を取り戻した。
温度や湿度を厳密に管理していたわけではないが、適度に乾燥してカビなどは見られない。ただ、発掘時の土などが絵を覆っていたため、保存処理会社「𠮷田生物研究所」(京都市)と京都造形芸術大の岡田文男教授(文化財科学)がクリーニングを施し、鮮やかな色を取り戻した。
杉山正明・文学部教授(ユーラシア史)は「歴史資料の少ない遼の文化が高い質を持っていたことが一目で分かる貴重な資料」。また、来日時に確認した中国・西安市文物局の孫福喜副局長も「遼の壁画自体きわめて希少で貴重。なおかつこの壁画は皇帝陵のもので実にすばらしい。保存状態も良い」というコメントを寄せている。
公開は6月18日まで、京都市左京区の同大学総合博物館(075・753・3272)で。
公開は6月18日まで、京都市左京区の同大学総合博物館(075・753・3272)で。