HOME > インフォメーション一覧 > 2007年12月15日朝日新聞 掲載記事「懐かしさ 守りたい」
2007.12.14(fri)
木綿の服をまとった表情豊かな人形で知られる与勇輝さんの作品を後世まで残そうと、布の劣化や退色を食い止める保存処理作業が、京都市山科区の文化財保存会社・吉田生物研究所(吉田秀男社長)で進んでいる。同社が開発した樹脂を使う手法で、博物館などに収蔵されている着物などの布製品の保存に有効だという。
与さんの人形は、古い木綿の着物を衣装に使い、リアルさと懐かしさを感じさせる作風で人気が高い。しかし20年以上前の作品は、服や髪などの退色が進んでいる。与さんの作品を管理している東京の画廊が、遺跡出土品の保存処理や生物標本の作製を手がけている吉田生物研究所に相談し、同社が開発した新技術を使うことになった。
人形にはさまざまな素材が使われている。髪は絹糸。肌や衣服は木綿。紙も使われている。それぞれの素材に合った樹脂を選び、慎重に筆で塗っていく。細菌が繊維を分解するのを防ぐ天然成分の抗菌剤や、紫外線による色落ちを防ぐ薬剤も混ぜて、保存の効果を高めている。
吉田社長は「色合いや風合いには変化が起きないようにするため、どんな樹脂を使うか、慎重に選ぶ必要がある」と話す。今後は布を使った造形作品や歴史的な衣類、家具などの保存に応用していく方針だ。
吉田社長は「色合いや風合いには変化が起きないようにするため、どんな樹脂を使うか、慎重に選ぶ必要がある」と話す。今後は布を使った造形作品や歴史的な衣類、家具などの保存に応用していく方針だ。
薬剤で退色や劣化を防ぐ保存処理が進む人形作家、与勇輝さんの作品=京都市山科区で